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夜の画家

   こんばんは、

   どんな風に話を続けてゆくのか、分からないままに始めてしまいました、、

 

        

                                               from: wahooart.com

         まずは一枚の絵から

              ヘラルト・ファン・ホントホルスト(1592-1656)

                              使徒トマスの疑い 1620年頃、プラド美術館像 130×100?

    そのトマスに関して、ある文章を引用してみましょう、、

 

     トマス(Thomas)は、<深み>というほどの意味である。あるいは、<二重の者>

     という意味で、ギリシア語のDidymos(ディデュモス)にあたる。あるいは<分割>

     もしくは<分離>を意味するthomos に由来する。彼が<深み>と言われるのは、

     神性の深奥をきわめたからであり、つまり、キリストが彼の問いに

     「わたしは道であり、真理であり、生命である」と答えられたからである。

 

     彼が<二重の者>と言われるのは、主の復活が真実であることを、

     他の人たちのようにただ眼で見るだけではなく、見るとともに手でさわって

     二重に確かめたからである。

 

     彼が<分割>もしくは<分離>と言われるのは、こころを世俗の愛から分かったから

     であり、また、復活されたキリストを信じる点でほかの使徒たちと意見が分かれた

     からである。あるいはまた、Thomas は、totus means つまり、

     <あまねくめぐり歩く人>という意味でもある。

 

     すなわち、神への愛と観想とにおいてあまねくめぐり歩いたのである。

     というのは、この神への愛を証明するとりわけ3つのことが、彼にそなわっていた

     からである。

     プロスペルは、『観想的生活について』の中でこう述べている。

     「神を愛することは、こころのなかで神についての観想を切に熱望し、罪を憎み、

     世俗を軽蔑すること以外のなんであろうか」と。

 

               ウォラギネ「黄金伝説」使徒トマス、冒頭

 

 

     

    たとえば、「わたしは道であり‥‥」というキリストの答えを引き出した

    トマスの質問については、、

    そもそもその質問が発せられたのは、「最後の晩餐」のとき、

    「わたしを裏切ろうとしているものがいる」という言葉をイエスが呟き、

    裏切り者のユダがその場を去ってから、

    イエスはその自らの死を予測し、先に逝くことを暗示し、

 

      「あなたがたのために、場所を用意しに行くのだから。そして行って、

      場所が用意できたら、またきて、あなたがたをわたしのところに迎えよう。

      わたしのおる所に、あなたがたも居らせるためである。わたしがどこへ

      行くのか、その道はあなたがたにはわかっている。」

      トマスがイエスに言った、

      「主よ、どこへおいでになるのか、わたしにはわかりません。

      どうしてその道がわかるでしょう」

      イエスは彼にいわれた。

      「わたしは道であり、真理であり、命である。

      だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。

 

                新約聖書ヨハネ福音書、14章

                      、、、、

 

 

    もうひとつ、トマスに関する逸話を聖書から拾うと、、

    同じヨハネ福音書11章、ラザロを蘇らすためにもう一度ユダヤに行きたいと

    弟子たちに言ったとき、弟子たちは「ユダヤ人たちが、さきほどもあなたを

    石で殺そうとしていましたのに、またそこに行かれるのですか」と反対したとき、

    トマスひとりが、

 

      「わたしたちも行って、先生とともに死のうではないか」

 

            と、みなを鼓舞します、、

            この言葉にイエスがどれほど救われているか、、、

                   、、、、

 

 

   さて、使徒トマスについて少し見てきましたが、

   そろそろ今日の本題に入ってゆかなければならないようです、、、

   まずは、上の2番目の文章、わたしは「道であり、、」に続く部分から、、

 

      だれもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。(つづいて)

      もしあなたがたがわたしを知っていたならば、私の父をも知ったであろう。

      しかし、今は父を知っており、またすでに父を見たのである」。

      ピリポはイエスに言った、「主よ、わたしたちに父を示して下さい。

      そうして下されば、わたしたちは満足します」。

      イエスは彼に言われた、「ピリポよ、こんなに長くあなたがたと一緒にいるのに

      わたしがわかっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのである。

      どうして、わたしたちに父を示してほしいと、言うのか。

      わたしが父におり、父がわたしにおられることをあなたは信じないのか。

      わたしがあなたに話している言葉は、自分から話しているのではない。

      父がわたしの内におられて、みわざをなさっているのである。

      わたしが父におり、父がわたしにおられることを信じなさい。

 

           そう、イエスにたしなめられます、、

           その「ピリポ」、先回と同じシリーズで、ラ・トゥールが描いています、、

 

         

                                                    from:  wikipedia

          使徒ピリポ(フィリポ) クライスラー美術館 アメリカ

                                                    63×52

           、、先回のトマスの肖像とは打って変わって、

             内向的・内省的な作品、、

 

 

     今日の本題はこの画家を、と思っているのですが、

 

     ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593−1652)

     パン屋の息子として生まれ、当時のフランス国王ルイ13世付の画家にまで

     登りつめた人、彼の息子は貴族にまでなっています、、

     その息子が画家であったことを隠すようにしていたためもあって、

     よけいに彼の名は人々の記憶から消え去ってゆきます、、

     その作品も、何百枚も描かれたといいますが、何度も戦乱に遭遇し、

     現在残っているのは、40枚ほど、、

 

     さて、その彼、歳をとるにつれて、夜の場面を描くようになり、、

                  、、、、

 

        

                 from: wikipedia

        ヨセフの夢 製作年ははっきりしません、1640とか45年説も

             フランス・ナント美術館蔵  93×81

 

     マリアの懐妊は精霊によるものである、と、天使がキリストの父(ヨセフ)

     の夢の中で語っているところ、、

     直接、ロウソクの炎を描くことなく、その光で画面を構成していますが、

     光の当たり方は実際の様ではなく、新たに造られています、、

     天使がロウソクの手前に立っているのに、顔を照らす光は、

     すこし画面手前からのように描かれています、、

 

     そもそも、ロウソクの炎、キリストの顕在とかの象徴、

     生命とか、信仰の象徴でもあります、、

 

        もう一枚、

 

        

                                                 from: wikipedia

                            聖ヨセフ  ルーヴル美術館蔵  137×102

                    1642 or 1645年

 

        父・ヨセフは大工、彼が作っているのは十字架です、、

 

     

 

        ヨセフはイエスを見つめ、

          この視線、いとしい我が子にむける愛の目であるよりも、

          もうすこし違うものを表現しているようにも見えてしまいます、、

        イエスは父の目を見つめかえすことなく、

        口を少し開いて、なにかをしゃっべっているようですが、

        目は父の顔に向けられていません、、

                                         、、、

 

        

          もう一枚、

 

        

                     from:wikipedia

            生誕 フランス・レンヌ美術館蔵  76×91

                  1648−51 45−48年説も

 

       

              

       マリアの母アンナとマリア、生まれたばかりのイエス

       アンナの視線はイエスに向けられているようにも見えますが、

       どうも、あらぬところを見つめているような、、

       首をいくぶん傾けていますが、それもイエスから逆方向、

       画面手前に向けて、すこし引くように、、

                  、、、、

 

      

       もう一枚最後に

 

      

                                           from:salvastyle.com

                     羊飼いの礼賛 ルーブル美術館蔵 107×137cm 

 

       両脇にマリア(赤い服)とヨセフを配して、

       中に杖を持った羊飼いとミルク壺を持った女性、

       中央の人物は帽子に手をやって、笛のようなものを持っています、、

         杖は、武器にもなることから神から授けられた権力の象徴にもなり、

         羊飼いが持つという笛は、音楽、、音楽は神の栄光の賛美につながり、

         ミルク壺の乳は赤ん坊が最初に口にするのもで、豊穣のシンボル

         永遠の命をもあらわします、、

 

 

 

       この5人の人物、明らかにイエスを見ているようなのは、

       中央の笛吹と右端のヨセフ、、

       他の3名は、どうも視線が読めません、、

 

       そして、イエス、

       子羊は彼自身の象徴でもあります、

 

                

 

 

       すこし枚数を多く挙げすぎました、、

 

       ただ、どの作品にも共通してしまうのが、、

       それぞれに単独の個人として描かれていること、、

         、孤独なひとりの人間として、

       各個人のあいだの交流や連帯、一体感をあまり感じられないのは、

       私だけでしょうか、、

                、、、、

       

 

       ラ・トゥールが生きた時代、戦乱や疫病(ペストをはじめとする)で

       生まれた人の半数が20歳までに亡くなっていたとも言います、、

 

      

       そして、1652年1月、

       15日に妻を亡くし、22日に子供のひとり(従僕説もあり)を、

       30日には後を追うようにラ・トゥール自身も亡くなってしまいます、、

 

             、ペスト、、です、、

 

 

 

          

          さてさて、「死」が今よりもずっとずっと

          身近であった頃のお話でした、、

 

 

          今日はこのへんで、、

 

             

             参考文献

               以前からのものに加えて、

               田中英道「冬の闇 夜の画家ラ・トゥールとの対話」新潮社

               名画への旅12 絵のなかの時間 講談社

               世界美術大全集 西洋編17  バロック・2  小学館

       


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  • 2017.10.04 Wednesday
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