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最後の晩餐 ダ・ヴィンチのメッセージ

  こんばんは、

  久しぶりの更新になります、

  このところ、すこし頭に引っかかっていることを、書いてみます、

 

  まずは、一枚の地図から、、、1499年頃のイタリアです、

     

 

   中央部大きく見えるFirenze (フィレンツェ共和国)、その横にUrbino(ウルビーノ公国)

   その下部には大きくローマ教皇領、

   このウルビーノ公国、そもそもは教皇領でありましたが、1443年に教皇の許可により

   独立、以後200年にわたって存続しますが、最後の領主に後継ぎが無かったため、

   1631年、再び教皇領に戻ります。

   しかしその200年の間ウルビーノ宮廷はルネサンス文化の一つの中心として栄えます。

 

   さて、その滅亡時、宮廷に残された遺産のうち、公国の記録文書、高価な家具

   調度品、宝飾品、そして名画の数々は、唯一に遺産相続人であり、フィレンツェの

   大公に嫁いでいた姪ヴィットーリアに相続され、豪華な写本や書籍の数々は

   ヴァチカン図書館に運ばれます。

 

     公国の最初の領主、フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロは書籍収集のため

     常に30〜40人の写本家を各地に派遣していたといいます、、

 

   そのなかに、今日の本題に近づくためのレオナルド・ダ・ヴィンチの文章が

   含まれていました、、

   彼の絵画論です。   

      

     「画家は、自分を魅惑する美を見たいと思えば、それを生みだす主となり、また、

     肝をつぶすほどの奇々怪々なものであれ、ふざけて噴き出したいような者、

     実際可愛そうなものであれ、何でも見ようとおもえば、その主となり神となる。

     またもし、さまざまな土地や沙漠、暑い日には陰深く小暗い木立を生み

     出したいとおもえば、かれはそれを描く。

     もし渓谷が入用なら、もし山々の高嶺から広野を見はらしたいなら、またもし

     その彼方に平らな海面をみたいなら、かれはその主である。もし低い谷から

     高山を仰ぎ、あるいは高い山から低い谷や傾斜面を俯瞰したいというなら、

     [それも同様だ]。実際この宇宙のなかに本質として、現在としてあるいは

     想像としてあるものを、かれはまず脳裏に、次には手のなかに所有する。

     そしてそれは非常に優秀なので、それらがいかなるものであろうとも、同時に

     一眸の中に均衡のとれた調和を生じる。

              「レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上」 岩波文庫

 

          この記述たとえば以前に触れた「モナリザ」の背景等にもそのまま

          当てはまります、、、

          今回は「最後の晩餐」を見てゆきますが、

 

        

                                         

  

  まずは、その本題に入るまえに「最後の晩餐」という史実?について

  すこし見ておきましょう、

 

  「新約聖書」福音書4つにその記述が残っていますが、

  最も成立が古いとされる「マタイ福音書」から

 

    「さて、除酵祭の第一日に、弟子たちはイエスのもとにきて言った、

    「過ぎ越しの食事をなさるために、わたしたちはどこに用意をしたらよいでしょうか」

    イエスは言われた、「市内(エルサレム)にはいり、かねて話してある人の所に

    行って言いなさい、『先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと

    一緒に過ぎ越しを守ろうと、言っておられます』。弟子たちはイエスが命じられた

    とおりにして、過ぎ越しの用意をした。

    夕方になって、イエスは十二弟子と一緒に食事の席につかれた。そして一同が

    食事をしているときに言われた。「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたの

    うちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。弟子たちは非常に心配して、

    つぎつぎに「主よ、まさか、わたしではではないでしょう」と言いだした。

    イエスは答えて言われた、「わたしと一緒に同じ鉢に手を入れている者が、

    わたしを裏切ろうとしている。たしかに人の子は、自分について書いてある通りに

    去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は

    生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。イエスを裏切ったユダが

    答えて言った。「先生、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは言われた、

    「いや、あなただ」。

    一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに

    与えて言われた、「取って食べよこれはわたしのからだである」。また杯を取り、

    感謝して彼らに与えて言われた、「みなこの杯から飲め、これは、罪の許しを

    得させるようにと、多くの人のために流すわたしの契約の血である。     

 

 

  たとえば、レオナルドより15年ほど前に、フィレンツェで描かれたもの、

 

    

                         from "Art and The Bible"

                                 ギルランダイオ 「最後の晩餐」 サンマルコ美術館

 

     裏切り者ユダはテーブルのこちら側に、使徒たちにも大きな動きはありません、

     ダ・ヴィンチの作品は画面の設定をキリストが裏切り者がいると言った瞬間に

     絞っています。

 

    

 

     各人それぞれに異なった様々な動き、3人づつ4つのグループに分かれ

     波打つように描かれています、、

     イエスその人だけが中央にひとり使徒たちから離れるように孤独に座る姿、

 

     このひとりひとりには、もちろん人物設定されていて、画面左から

 

                   バルトロマイ

                   小ヤコブ

                   アンデレ

                   ユダ(裏切り者)

                   ペテロ

                   ヨハネ

 

                   イエス

 

                   トマス

                   大ヤコブ

                   ピリポ

                   マタイ

                   タダイ 

                   シモン

 

             ひとつ付け加えるなら、

             これだけ各人が重なるように接近して描かれているにもかかわらず、

             ひとりひとりの手は、すべて違うかたちで隠れることなく、

             見えていること、、、

 

             

             さて、ここでひとつの疑問が、、

             使徒たちは何故この順番で描かれたのか?

             レオナルドは神のようにどういう順番でも描けたわけですから、、

 

     

             ここで全体像を見ていただきますが、

 

     

                              from "Ilumunelnforme.it"

                               ミラノ、サンタ・マリア・デル・グラーチェ教会

 

   イエスたちが食事している部屋とこちら側の間に、たれ壁が描かれ、

   そこにアーチで囲われた3つのエンブレムがみえます、

   中央の大きなものが、ミラノの領主ダ・ヴィンチのパトロンである、

   ルドヴィコ・スフォルツァのもの、向かって右が跡取の長男マッスりミリアーノのも、

   左は二男フランチェスコのものといいます、、

   序列は向かって右から始まっています、、

 

 

   ここで、もうひとつ、レオナルドの手記を引用しましょう、

   こちらは現在、フランス学士院図書館?に保管されている直筆のメモから、

   (こちらはレオナルド晩年の死まで彼自身が手元に持っていたため、

    フランス王家の所有になったものでしょうか?

 

 

     「その理論が経験によって確証されないあの思索家たちの教訓をさけよ。

 

     「しかし私は、もっと先に進む前にまず何かの実験を行おう。なぜなら私の意図は

     まず実験を挙げてしかる後になぜかかる実験がかかるふうに作用せざるを得ない

     かを、理論によって証明するにある。そしてこれこそ自然の諸現象の思索者たちが

     よってもって進むべき正しい法則である。自然そのものは理論に始まって経験に

     終わるにしろ、われわれにとっては逆に追求することが必要である。すなわち、

     上で言ったように、実験から開始して、それによって理論を検証することが。

             ダ・ヴィンチの手記 下  科学論 岩波書店

     

 

   「最後の晩餐」の弟子たち、、イエスに一番近い序列として描かれているのは

   上記の息子たちのエンブレムの配置からもうかがえる様に、

   他でもありません、何度もこのブログに登場している聖トマス、、 

      「懐疑のトマス」とも呼ばれる人、

 

      イエスが復活し、弟子たちの前にあらわれた時、その場に居合わせなかった

      トマスは、

      「わたしは、その手に釘あとを見、わたしの指をその釘あとにさし入れ、

      わたしの指をそのわきにさし入れてみなければ、決して信じない」

      と、イエスの復活を信じようとしません、 

      そのためイエスはトマスの前に姿を現し、傷跡に指をさし入れることを

      勧めます、そして、

      「信じない者ににならないで、信じる者になりなさい」と言い、

      「あなたはわたしを見たので信じたのか。見ないで信じる者は、

      さいわいである」と言い足します、、

                  ヨハネ福音書20章

     

      この記述は宗教のある本質を言い得ていますが、

      レオナルドの上記の手記とは、相反する言説です、、

      見方によれば、弟子たちの筆頭にトマスを持ってきたレオナルドは

      彼自身の信念をここで表現しているともとれます、、

 

 

      たとえば、上のギルランダイオの「晩餐」では、

      向かって右に、イエスが最も愛した弟子ともいわれるヨハネ、

      左には一般的に「第一の弟子」と呼ばれるペテロ、

      初代ローマ教皇といわれるペテロを描いていますが、、

 

             

 

 

        

     

 

           

 

      レオナルドのペテロはギルランダイオと同じくパン切ナイフを手にしていますが、

   ある悪意のような雰囲気をにじませています。なおかつ体の動きとして、

   手首の曲げられた様子があり得ないように描かれています、

 

      ペテロは元来気が短く攻撃的な面も持っていたようですが、

      あまりにあからさまに描いているような、、

      ローマでこの作品を描いていれば、教皇庁から攻撃されそうな、、

      序列に関しても、イエスから離れています、

                   、、、、

   

 

 

    さてさて、すこし長くなってしまいました、

    まだまだ、書かなくてはならないこともあるのでしょうが、

 

    今日は、このへんで、、

 

 

         そうそう、参考文献を挙げるのを忘れていました、

 

           ブルクハルト 「イタリア・ルネサンスの文化」 中央公論社

           ケネス・クラーク 「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 法政大学出版局

           フランチェスコ・ルイ・ロンバルディ 「ウルビーノ大公国の歴史 

                                            1431-1631年」

           下村寅太郎 「ルネッサンス的人間像」 岩波新書

           片桐頼継 「ダ・ヴィンチという神話」 角川書店

           アメリア・アレナス 「よみがえる最後の晩餐」 日本放送出版協会

           J・ワッサーマン 「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 美術出版社

                                 他

           

 

    

 


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